パフィオペディラムの栽培は難しい?

 

 どんな趣味でも極めようと思えば、またより高いレベルを求めればそこには困難が伴います。園芸にしてもそうです。人より素晴らしい作柄にしたい、素晴らしい花を咲かせたいと願えば研鑽努力が必要になります。

 しかしながら、人に愛倍される園芸植物のなかで蘭ほどローメンテナンスが可能な植物は他に類を見ません。基本的な環境設定である、日照条件、温度条件、適正な湿度を整えた環境を用意すれば人がすることは灌水、施肥、病害虫の防除、植え替えくらいです。その上、蘭科植物のほとんどは乾燥に耐える能力を備えていますから多少水やりを怠ってもなんらの生育障害も出ません。例えばお忙しい日常をお過ごしの方がマンションの室内で蘭を育てるとしても全く無理なく出来ることです。基本条件を整えておきさえすればほとんどの蘭は温室や特別な手入れが無くても栽培できる現代人のライフスタイルに非常に良く合う植物なのです。他の園芸植物はバラであれユリであれ留守が長く水やりが出来なければ枯れます。蘭はどうでしょう?1週間くらい留守をしてもほとんどの蘭は枯れたりしないでしょう?ことほど左様に蘭はもともと枯れにくい植物なのです。

 パフィオに関しても全く同じことが言えます。ご自分のライフスタイルに合わせて過不足ない成長をさせ楽しむなら幅広い環境に適応できるカジュアルな園芸植物なのです。

 ランの初心者向けのハウツー本には良く「蘭は水をやりすぎると根腐れをするから乾いてから水をやるように」と記されています。これは正に金言です。パフィオの栽培においては地性蘭であるから湿潤を好むというイメージが邪魔してしまい、とかくこの金言を無視して灌水過多になりがちです。これまでパフィオを苦手にしてきた方は、是非基本に立ち返り‘乾いてから次の水をやる’(=灌水と灌水の間に鉢の中が乾く時間を作る)を実践してみて下さい。実に楽に過不足ない作柄になるものです。パフィオは皆さんがお考えになる以上に乾燥に強いものです。また程よい乾きを演出すると健全な根が沢山生じ、更に良い生育を見せるようになります。乾いてから水をやるということは誰でもコストをかけずに実践できることです。パフィオにおいても栽培の基本はこのことに尽きます。こんなことならどなたにもどこでも出来るのではないでしょうか?日々、鉢の乾き具合を見るともなく観察する。良く乾いたらようやく灌水する。簡単でしょう?その上鉢が乾ききった時、お忙しく水をやれないまま数日を過ごしたとしても乾ききった状態が長期間続かなければ問題はありません。その上で、さらに手を抜いて良い生育を引き出すならパフィオの好む安定した湿度を維持することです。温室があればほとんどの地域で湿度に悩むことは無いでしょう。もし室内でパフィオを育てようとするならば少し湿度に気を配ったほうが良いでしょう。人の常に居るような部屋は、大概採光が良くエアコンで温度も適度でその上清潔でパフィオの生育に問題になる条件と言えば低湿度くらいです。これを補正するには、夜間のみパフィオを収納できるケースを利用すれば簡単に解決します。夜間のみこのケースにパフィオを収納し軽く霧吹きをしておく。こんな工夫で格段に出来が良くなります。

そうです。パフィオはローメンテナンスが可能で現代人のライフスタイルに合いやすい栽培が簡単な園芸植物なのです。どなたでも、いつでもご自分のライフスタイルに合わせて無理なく気軽に楽しめる良い趣味となりえるのです。

以下に基本的なパフィオの栽培指南を記しておきます。

 

置き場所(環境設定)

 

 置き場所=環境設定は蘭栽培において最も大切なことです。温度、光線量、風通しを整えパフィオの生育に好適な環境に近づけておくことが出来ればいつでも栽培はスタートできます。良い環境づくりが出来れば栽培はほぼ成功したと言えるほどです。またパフィオは自ら環境適応能力の幅を持っていますから下記の要件から逸脱したとしても生育はします。

下記を参考にして栽培環境を整えてください。もし最初に決めた置き場所で良い生育をしない場合は、置き場所を変えてみましょう。意外に良い効果が得られるものです。

 

【日照】

温室や夏季の戸外の置き場所の場合は50%~75%の遮光が好適です。室内の場合は、午前中に日の当たる窓辺あるいは昼間に燈火なく読み物の出来るような明るい部屋が好適です。

 

【温度】

12℃から35℃くらいが栽培適温です。理想的には15℃から30度くらいの温度帯では旺盛に生育します。つまり人がいる室内の温度はパフィオの生育に好適と言えます。

 

【通風】

葉が揺れるほどの風がなくとも秒速1mほどの微風があれば充分な生育をします。室内においても、空気の対流などで柔らかな空気の動きがあります。よほど空気の淀むところでなければ大丈夫です。

 

手入れ

 

 前述のように置き場所(=環境設定)をパフィオに合うように整えましたら後の手入れは実に簡単です。簡単に言えば人がやることは‘乾いたら水をやる’だけの事です。これを年間通して繰り返せば、ゆっくりとしかししっかりとパフィオは育ち花を咲かせます。

 

【水やり】

 鉢が乾いてから水やりをして下さい。鉢が乾いたかどうかの判定には、日々の観察が肝要です。本気で鉢の乾燥を確認するならば、鉢の目方を計り灌水後と乾燥時の鉢の重さを把握しておく方法もあります。鉢が乾燥時の重さになりましたら次の灌水を行うというものです。そこまで生真面目にならなくとも日々観察をしていれば乾燥を確認するのはさほど難しくありません。

ポイントは鉢が乾いてから水をあげるという事です。逆に言えば鉢が乾きき

る前に水をやらないという事です。基本的な手入れは年間を通して、乾いたら水をやる事を繰り返すことです。この方法を遵守しますと、置き場所の環境、季節によらずパフィオに好適で安全な水やりを行うことが出来ます。

 【施肥】

 水やりの際には年間を通して極薄い液肥を施すようにしましょう。季節、置き場所、株の状態に応じて施肥の頻度や肥料の内容を変えることによりさらに良い生育を得ることが出来ます。しかしながら繊細な施肥の勘所を把握するのは中々に難しい事です。そこで、誰でも失敗せずに簡単確実に施肥を行う方法は灌水時にただの水でなく薄い液肥を水やり代わりに施すというやり方です。液肥の希釈倍率は4,000~5,000倍ほどの極薄いものが好適です。

肥料のブランドはお好きなものを選んで頂けばよいですが、窒素・リン酸・カ

リをバランスよく含むものを選んでください。肥料の倍率や頻度は年間を通

して均等で結構です。パフィオの生育には季節感があまりなく冬であっても

緩やかに生育を続けます。そのため年間を通じてコンスタントに施肥を行う

と結果として良い生育になります。

 

【植え替え】

 2年に一度は定期的な植え替えを行いましょう。植え替えは、傷んだコンポスト(植え込み材料)を新しいものに替えるだけでなく、普段は見る事の出来ない鉢の中の根の状態を確認できる絶好の機会です。根を観察することから今後の栽培を改善することも出来ます。健全な根が沢山あるならばこれまでの栽培が適正であったことを示します。根が腐っているあるいは、健全な根の量が少ないようなら灌水過多の傾向を示します。今後の灌水はこれまでよりより控えめにすると良いでしょう。